大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

京都地方裁判所 昭和29年(行)13号 判決

原告 鳥居利三郎

被告 京都府収用委員会

補助参加人 京阪神急行電鉄株式会社

主文

起業者たる参加人の、被告に対する原告所有の京都市下京区四条通大宮東入立中町四百七十八番地の土地二十一坪三合五勺の収用裁決申請につき、被告が昭和二十九年十月九日にした右土地の収用裁決は、これを取り消す。

訴訟費用中、原告と被告間に生じた費用は被告の、参加により生じた費用は参加人の各負担とする。

事実

「原告側の主張。」

(請求の趣旨)

原告訴訟代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

(請求の原因)

第一、本訴の対象たる収用裁決の存在。

参加人京阪神急行電鉄株式会社(以下参加人又は起業者と略称する)は、その京都駅停車場拡張用地を取得するために、昭和二十六年十一月二十四日起業者として建設大臣の事業認定を受け、ついで昭和二十八年九月十四日被告たる京都府収用委員会(以下被告委員会と略称す)に対し、原告所有の主文第一項掲記の土地(以下本件土地と略称す)の収用裁決を申請した。これに対し被告委員会は、昭和二十九年十月九日「本件土地を収用する。起業者は金六百七十七万四千六百六十円を土地収用による損失の補償として土地所有者原告に支払うべし、収用時期は昭和二十九年十月三十一日とする。」旨の裁決をし、同月十二日到達の裁決書謄本を以てその旨原告に告知した。そこで原告は同月二十五日建設大臣に訴願の申立をしたが、これは本訴係属中の昭和三十年十月十四日付で同大臣から却下された。

第二、裁決の違法事由。

しかしながら、本件裁決には次のような違法があるのでその取消を求める。

一、無資格者が委員として事務を執行した違法。

昭和二十八年十月二十七日京都府自治会館において開かれた本件土地収用の審理に際し、無資格者である八木繁雄が委員として当日の事務を執行したのに対し、被告委員会はこれを許容した違法がある。すなわち、当日の審理に被告委員会の委員中村一策は欠席したが、同人の委任を受けた八木繁雄は、無資格者であるにかかわらず中村委員の代理人として出席し、(当日傍聴席と劃然区別されていた委員席に着席し、)審理中当事者席の原告に対し約十分にわたつて質問し原告の説明を求めたが、これに対し、右審理の主宰者である被告委員会会長村山喜一郎は、なんらの制止もせず、これを許容した。そして八木繁雄は、この審理終了後に行われた被告委員会の会議においても、同様に委員としての事務を執行したものと推定される。しかし、被告委員会は国家の機関であり、その職務は特別の規定のない限り任意に他人に委任しうるものではないと解すべきところの職務の代理を許したものと認めることのできるなんらの規定もないから、無資格者をして委員の事務を執行させた右審理は違法であり、この違法な審理に基いてした本件裁決は取消を免れない。

二、不適法な構成で審理裁決をした違法。

被告委員会の委員中村一策は、昭和二十九年六月十四日に辞任し委員に欠員を任じたにも拘らず、被告委員会はこの欠員の補充をしないで不適法な構成のまま本件土地収用の審理並びに裁決をした違法がある。すなわち、土地収用法(以下単に法と略称する。)第五十二条第一項第五十三条第二項によれば、収用委員会は委員七名を以て組織し、委員に欠員の生じたときは予備委員中の先順位者が就任する定めであるところ、当時被告委員会の予備委員である雉本俊平、同杉村敏正の両名が夫々順位を付して任命されていたかどうか疑わしく、また仮りに順位は付されていたとしても、就任すべき予備委員に「欠員を生じたから委員に就任すべき旨」を通知しなければ、予備委員は委員就任の認識、並びに職務の遂行をする術がないから、この通知により始めて予備委員に就任するものと解すべきである。しかるに被告委員会は予備委員に右の通知をしていないから、中村委員の辞任後、予備委員が委員に就任してその欠員を補充するいわれはなく、よつて被告委員会が適法に構成されていたものとは解せられない。仮りに一歩を譲り先順位の予備委員は委員の欠員により右の通知を要せず当然委員に就任するものとしても被告委員会は中村委員の辞任後開かれた本件土地収用の審理並びに裁決に際し、右予備委員両名のいずれに対してもその招集の通知をしていないから仮りに当日の審理、会議並びに裁決が形式上定足数に欠けるところがなかつたとしても、右の如き法定構成員全員が出席する可能性の保証がない限り、被告委員会が適法に構成されて、合議体が成立しているものとは到底解せられない。しかも欠員の補充により本件裁決は結論を異にすることも十分考えられるのであるから、右の違法は重大であつてこの点においても本件裁決は取消を免れない。

三、審理を公開せず、または防禦権の行使を不当に制限した違法。

1、収用委員会は裁決及び決定の会議を除き、その他の会議並びに特に審理については必ず公開しなければならないことは法第六十二条第六十六条の明記するところであるにもかかわらず、被告委員会は、公開すべき七回の審理期日の殆んど全部においてこれを公開しなかつた違法がある。すなわち、行政委員会の設けられた精神に鑑み、収用委員会の審理に際しては、委員間の意見の開陳乃至交換も公開の対象となるべきものと解せられるところ、原告は本件に関する被告委員会の各審理期日に必ず出席して或は傍聴し、或は意見を述べたが、右の機会は全く与えられず、委員間の討議や決定は関係人及び傍聴人の退室後に行われた。特に昭和二十八年十月二十七日京都府自治会館で開かれた委員会においては、起業者の意見を陳述する段階で原告は退席を求められ、起業者の意見を聞く機会すら与えられなかつた。これは明らかに法第六十二条に定められた審理公開の原則に反し不当に原告の権利を制限したものである。しかして被告委員会は土地所有者の生活上の死命を制するほど重大な決定権を与えられておるのであつてさればこそその手続は準司法的性質を帯びるように定められ、当事者の種々の権利が認められているのであり、そのうち審理の公開は最も重大なものであつて、これによつて始めて当事者は自己の権利を守るための行為をしうるものであり、また法第六十二条により秘密会とするためには厳重な制限を科せられている所以もここにあるといわねばならない。しかるに原告は常に紳士的態度を以て臨んでいたのであるから非公開とされる理由はなく、勿論法第六十四条第三項により退場を命ぜられるに相当しないから、被告委員会の審理は公開の原則に反し違法である。

2、仮りに審理公開の原則に反していなかつたとしても、原告の防禦権の行使を不当に制限した違法がある。すなわち、前記のように土地収用は場合によつては被収用土地所有者の生活上の死命を制するほどの重大問題であるから、土地所有者に起業者の意見をきいてこれを反駁し、自己の主張を整える機会を与えられるべきことは、準司法的手続において当然保証されるべき防禦権の一つであるというべく、これを不当に制限した被告委員会の審理は違法である。

従つて右違法な審理に基いてなされた本件裁決はこの点においても取消を免れない。

四、替地補償をしない違法。

被告委員会は原告の替地による補償の要求に対し、その裁決書の理由中二の2のハにおいて、「土地所有者が指定した大宮通四条角西側はその地下部分が既に地下鉄道として完全に起業者がその事業に使用しており、またその地上部分は第三者の賃借権の対象となつており、この部分を替地として提供するため、第三者の既得権を害することはできない旨の起業者の主張は相当と認められる。」と説示して原告の要求を却下したが、右は法第八十二条第二項に違反し、違法である。

1、先ず原告の右要求は左記のとおり同法条所定の要件を充していた。すなわち、

(一)原告の替地の要求が相当であること。原告は古くから本件土地を含む土地とその地上建物を所有していたが戦時中疎開命令によつて建物を毀され、土地は道路として京都市に買収され、僅に残つた本件土地上に建物を建築して京土産品販売を業として生計を立てており、今後もその営業によつて生計をたててゆくよりほかないものであるが、この土地を収用されたら附近に土地を購入することが容易でないのみでなく仮りに土地が得られたとしても原告の営業は京阪神急行駅から遠ざかるにつれて不利であること明らかであるから、原告が現在地の附近に替地を要求するのは過当な要求ではない。殊に原告が替地として要求した右の土地は、駅舎建築予定地でもなく、単に現在起業者が第三者にタクシー置場として賃貸している空地であつて、原告が本件土地を収用されて受ける損害と、起業者がこの土地を替地として原告に提供することによつて蒙る損害とを比較してみれば、客観的に判断して原告の要求が不当でないことは明かである。(二)替地の譲渡が起業者の事業又は業務の執行に支障を及ぼさないこと。原告はこの替地をもらつてそこに現在の店舖を移し、営業を継続したいと念願しているだけであるから、その地下部分は全然不要であり、起業者が現在同様に地下道(地下鉄道ではない)として使用することにはなんらの支障はない。また、起業者は「現在右替地の地上部分は京都相互タクシー株式会社に賃貸中であり、電車停留所にタクシー置場を設けるのに乗降客のサービスのため必要である。」というが、タクシー業は起業者の事業と不可分に結合した業務ではなく、これまた客観的に判断してここにタクシー置場が設けられなくても、起業者の事業の執行に支障をきたすものではない。(三)起業者が右替地を原告に提供することは決して不可能ではないこと。右替地の賃借人である右タクシー会社は六ケ月毎の契約に基き使用しており、その請書第六条によれば起業者の必要の生じた場合には契約期間中でも起業者の要求によつて明渡すとの定めがあるから、起業者が右タクシー会社からこの土地の返還を受け原告に提供することは不可能でないことはもとより、決して難事でもない。

2、しかも、法第八十二条第二項は、被告委員会に対し、替地補償の自由裁量処分を認めたものではなく、き束処分又は法規裁量処分であることを規定したものと解すべきである。すなわち、同法条が単に「収用委員会が相当と認めるとき」と規定せずして「その要求が相当であり」「替地の譲渡が起業者の事業又は業務の執行に支障を及ぼさないと認めるとき」と一定の要件を列挙していること、そしてこれは客観的に認定しうる問題であることからみれば、この規定は収用委員会に或程度の裁量判断を許容しているとしても、その裁量には当然の限界があり、客観的に法の要求する条件を充している場合においても、なお替地補償の要否が収用委員会の自由裁量にまかされているということはできない。しかしてこの規定中「収用委員会は替地による損失の補償の裁決をすることができる。」という定めは単に収用委員会の権限を定めたに止まるものではなく、法の要求する替地補償の要件が客観的に備わつた場合には、収用委員会は替地補償の裁決をする義務があること、すなわちき束処分又は法規裁量処分であることを規定したものと解すべく、この規定が収用委員会の権限の形で定められているのは、その裁決によつて起業者に対しその所有する土地の所有権を強制的に起業者に移転する効果が生ずるからであつて、義務の伴わない任意の権限であるからではない。かく解することは、土地収用法が一方公益事業のために私的所有権を制限収用する途を作るとともに、他方これにより制限収用される所有権に対し、憲法第二十九条第三項の保障する「正当な補償」の請求権を確保せんとする趣旨に適合するものである。仮りにこれを自由裁量処分であると解するならば、土地所有者の替地補償要求権は法律的効果のある権利ではなく、単に収用委員会の考慮を促す一種の事実行為、いわば歎願にすぎないものとなり、かくては法第八十二条第一項を特に設けた意味がないといわねばならない。

しからば本件裁決は原告の替地補償の要求が客観的に法定の条件を充しているにもかかわらず、これを却下したのであるから、違法であり、この点においても取消を免れない。

五、違法な事業認定に基く裁決の違法。

本件裁決は、その基礎となつた建設大臣の事業認定そのものが違法であり、これに基いてなされた本件裁決もまた違法たるを免れない。すなわち、起業者はその京都停車場の拡張工事のため昭和二十六年十一月二十四日建設大臣の事業認定を受けたのであるが、起業者が建設大臣に提出した事業設計書によれば、その事業は必ずしも運輸の施設という公益事業のみに限らず、純粋の公益事業以外の営利の目的のためにする計画が含まれているのである。すなわち、その設計書の一階に計画された厨房の部分、二階に計画された食堂及び集会席並びに地階に計画された貸店舖と推定される空間の部分等は明かに公益事業のための施設ではなく、また軌道運輸という事業に必然的に随伴する施設とも考えられない。しかるに建設大臣は、起業者の設計書がこのように公益事業のために直接必要でない営利事業のための空間を含んでいるにもかかわらず、その設計全体を土地収用のための公益事業として事業認定したのであつて、右は明らかに違法である。しかして、起業者の設計書のうち公益事業以外の営利事業に当てられた空間を取除き、純粋に公益事業に必要な部分のみに限局すれば、起業者の所有地の一部を替地として補償することができ、しかもそれによつて少しも起業者の事業に支障をきたす虞れはないといわねばならない。しかるに被告委員会はこの点に思いをいたさず、慢然違法な右事業認定を基礎として本件裁決をなしたのは、審理不尽の違法があり、また違法な処分というべく、本件裁決はこの点においても取消を免れない。

第三、被告らの答弁に対する反論。

一、本案前の抗弁に対して。

被告及び参加人は、本訴は結局法第百三十三条にいわゆる損失補償(替地補償)に関する不服の訴に帰するから起業者たる参加人を被告とすべく、被告委員会を被告とすべきでないと主張するが同法条の規定は、土地収用の場合でも土地所有権が起業者に移転し、その補償が起業者から支払われるという関係は私法上の売買に類似するという理由で民事訴訟としたのであり、そこにいう「補償」とは専ら補償額の多少にかかわる問題をさし、補償の裁決そのものの違法はこれに含まれない。若し補償の裁決そのものの違法も行政訴訟を許さないと解すべきものであるならば、補償に関する裁決の違法はついに救済を求められなくなり不当極りない。原告が本件で争つているのは補償額の問題ではなく、補償裁決の違法、すなわち原告の替地補償の要求が法第八十二条第二項所定の要件を具備しているにも拘らず、被告委員会がこれを却下したのは同法条に違反する処分であると主張しているのである。従つて、これは当然行政訴訟の対象となるべきものといわねばならない。

二、事業認定の違法は争いえないとの主張について。

被告及び参加人は、原告主張の違法理由五に対して、土地収用に関する裁決の効力を争う本訴において、事業認定の違法はもはや争いえないものと主張する。なるほど事業認定は、収用裁決とは形式的には一応独立した行政処分であるが、実質的にみれば、それ自身独立して意味のあるものではなく、必ずその後に土地収用裁決を伴い、これによつて完結する一連の土地収用処分の一部分であり、事業認定処分は土地収用裁決によつて具体的な権利義務関係としてその中に結実するものである。従つて事業認定処分に含まれた違法は土地収用裁決処分として具体化するものというべきであるから、土地収用裁決の効力を争う本訴において事業認定の段階における違法もまた争い得なければならない。(最高裁、昭和二十五年九月十五日判決参照)殊に本件においては、右理論の適用を有力にする次のような特殊事情が存する。すなわち、本件事業認定は前記の如く昭和二十六年十一月二十四日建設大臣によつてなされたのであるが、とき恰も旧土地収用法が失効し、新法が施行される同年十二月一日の直前であり、しかして、旧法によれば事業認定に対する訴願は許されず、且つ新法第二十四条、第二十五条に相当する事業認定申請書の公告も、その縦覧も、利害関係人の意見書の提出も認められなかつたから、事業認定は土地所有者の知らないところで知らない間に、且つ、たとえたまたま知つたとしても、なんらこれに対する有効を阻止手段も認められないままに決定されてしまう仕組となつていた。勿論そのとき行政事件訴訟特例法が存在したが、未だ事業認定の段階では具体的に誰の土地がどの程度に収用されるか明らかでないのであるから、一般的に民衆訴訟が許されない以上、この段階で土地所有者が行政訴訟を提起するには、当事者適格について問題がある等、土地所有を救済する方法は決して明確且つ十分ではなかつた。従つてこのような事態を無視して事業認定処分を確定不動のものとする主張はあまりに形式的に失し不当であるから、当然本訴において争いうるものといわねばならない。

「被告側の主張。」

(本案前の答弁の趣旨)

原告の訴を却下する。

(本案前の抗弁)

原告は、請求原因において縷々陳述するが、その要点とするところは結局損失補償(替地補償)に関する不服に帰し、主眼目はさらに多額の補償金額を獲得せんとするところにあり、その他の理由は附加的なものに過ぎない。とすれば、原告は法第百三十三条第二項の規定により起業者たる参加人を被告として訴を提起すべきであつて、被告委員会を被告とする本訴は不適法であるから却下さるべきである。

(本案に対する答弁の趣旨)

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

(原告主張の請求原因に対する答弁)

第一、請求原因中第一の事実はこれを認める。

第二、請求原因第二の事実中、本件裁決が違法であるとの主張はこれを否認する。なお、その詳細は次のとおりである。

一、請求原因中第二の一、(無資格者が委員として事務を執行した違法)について。

被告委員会が昭和二十八年十月二十七日に京都府自治会館において本件の審理を開いたこと並びに同期日に被告委員会の委員、中村一策が欠席したことはこれを認めるがその余の事実はこれを否認する。右審理の場所は、当事者、傍聴人等の位置について劃然とした区別がなかつたし、たまたま八木繁雄が在室していたとしても、他の傍聴者とともに同室していたに過ぎず、また傍聴人として私語することがあつたとしても、委員の職務として発言する等委員の事務を執行したことはない。またもとより、被告委員会の会長村山喜一郎が八木繁雄が委員として事務を執行するのを許容したことはない。

二、原告主張の請求原因中第二の二、(不適法な構成で審理裁決をした違法)について。

被告委員会の委員中村一策が昭和二十九年六月十四日に辞任したこと、当時被告委員会に雉本俊平、杉村敏正の二予備委員が在任していたこと並びに被告委員会が欠員を生じた旨を右予備委員に通知してないことはこれを認めるが、その余の事実はこれを否認する。被告委員会の右予備委員両名中雉本俊平が先順位者であつたから、中村委員辞任後は法第五十三条の規定により当然雉本俊平が委員に就任した。従つて被告委員会は、法定数七名の委員に欠けるところがなく、また雉本委員には委員就任後の被告委員会の開催の都度招集の通知を発送しているからなんら違法の点はない。なお、先順位の予備委員に対し委員に欠員を生じた旨通知することは、法解釈上その必要なきものである。

三、原告主張の請求原因中、第二の三、(審理不公開、防禦権不当制限の違法)について。

被告委員会が公開すべき本件審理期日の殆んど全部において審理を公開せず、公開の原則に違反したとの主張事実は全てこれを否認する。また被告委員会は本件裁決に至るまでの間頗る慎重な態度を以て審理し、些かも原告の防禦権を制限したことはない。すなわち、被告委員会は原告の意見書は法定期間経過後も三回に亙つて提出を許容し、原告及び起業者が意見書を提出する毎にこれを各々謄写して委員並びに相手方に配布しておいたし、さらに審理に際しては、開催の通知をもれなく関係者に発することはもとより、審理中京都府監理課の職員をして意見書を朗読させ、また原告の意見等については親切丁寧に指導せしめ、或は機会ある毎に口頭を以つて意見を述べさせる等できる限りの処置をした。そして、原告の替地により補償の希望に対しては、委員自ら現地を見分する外、起業者と原告間の和解を斡せんし、又金銭補償額についても、原告の選任した鑑定人の鑑定の結果はもとより、起業者側や被告委員会の選任した各鑑定人の鑑定の結果を綜合して、適正妥当な補償額を決定したのであつて、なんら不当の処置はなく、公開の原則に反したり、原告の防禦権を不当に制限した事実はない。

四、原告主張の請求原因中第二の四、(替地補償をしない違法)について。

被告委員会が原告の替地による補償の要求に対し主張の如き理由を以て却下したことはこれを認めるが、右の処分が違法であるとの原告の主張はこれを否認する。

1、原告の替地補償の要求は法第八十二条所定の要件を充たしていなかつた。すなわち原告の指定した土地は、現在地下鉄道の上部の空地で、目下京都相互タクシー株式会社に賃貸中の土地であるが、被告委員会としては裁決を以て右タクシー会社の既得権益を害することはできないばかりでなく、右タクシー会社の賃貸期間は六ケ月毎という短期使用で、しかも起業者の必要のあるときは、何時でも返還に応ずるという約定もあり、また右タクシー会社が使用する場合には地上の建物は移動不能な駐車施設としての一時的な建物で足りる地下鉄道になんらの支障を及ぼさない実状であるに反し、原告に替地として右土地を提供する場合には、半永久的な建物を建設すること並びに同建物に居住するならば上水道の使用、下水の排出が地下鉄道に悪影響を及ぼす危険が予想されたこと。又他方電鉄会社たる起業者が終着駅構内にタクシー乗場を持つことは必要欠くべからざるものといいうること。又原告の営業品目の大部分は果実類や一般菓子類及び食糧品等一般市販品の販売で京土産の販売はその一部を占めるに過ぎないから、起業者の京都停車場の乗降客を主たる顧客として営業成績をあげているものとはいえず、しかも原告の商才からみて、本件土地から若干距つてもその営業成績に消長があるとも認められないこと。原告が本件土地の西方約三百米の四条通に営業向きの家屋を所有しているので、そこで営業を続けることもでき、生活の危険に直面する虞れがないこと、並びに他の数ケ所の替地に対する和解の斡せんが不調に終つたこと。等の諸般の事情を勘案してできる限りの調査検討の未、金銭補償を相当として替地の要求を却下したものであるから、なんら違法の点はない。

2、仮りにしからずとしても、替地補償の要求に対する裁決は被告委員会の全くの自由裁量に委ねられており、き束裁量処分ではないから不相当ではあつても違法にはならない。すなわち、法第七十条は「損失補償は金銭をもつてするものとする」と断定的表現をとつているのに反し、同法第八十二条第一、第二項は単に「替地補償の裁決ができる。」旨定めて、「しなければならない」と規定せず、しかも、「要求が相当であり、且つ起業者の事業又は業務に支障を及ぼさないと認めるときは」との条件を定めているのである。しかして、土地収用は公共の利益となる事業に必要な場合に限りなされるものであるから、土地所有者がその正当な補償を受けることによつて公共の福祉と私有財産の保護の調和が完うされるものと解すべきことはいうまでもないが、近代社会の推移とともに、公共の福祉が次第に重んぜられ、他方私有財産には内在的制限が当然存在するものと理解されるに至り、この公益優先の一制度として土地収用制度が存在しているのである。以上の如き土地収用制度の本質や法第七十条、第八十二条の規定を比較考量すれば、損失補償に当り替地補償をするには法第八十二条第二項所定の条件を充すことが絶対不可欠であるが、仮りに右条件が揃つていても収用委員会がこの権限を行使して替地補償をするか否かは、土地収用の公益目的に鑑み収用委員会の全くの自由裁量に委ねられているものといわねばならない。

従つて、いずれにせよ本件裁決は違法でない。

五、原告主張の請求原因中、第二の五(違法な事業認定に基く裁決の違法)について。

起業者がその京都停車場の拡張工事のため昭和二十六年十一月二十四日建設大臣の事業認定を受けたことを認めるがその余の事実は全てこれを否認する。

1、起業者の事業設計書のうち原告の指摘する部分は公益事業の施設の一部に過ぎないから本件事業認定処分にはなんら違法の点は存しない。従つてこれに基いてなされた本件裁決も違法でない。

2、仮りにしからずして本件事業認定処分に若干の瑕疵があるとしても、原告は本訴においてもはやその瑕疵を以て本件裁決取消の理由とはなしえない。すなわち、本件事業認定は旧土地収用法により建設大臣がしたもので、旧法によればこれに対する訴願は許されなかつたとはいえ、行政事件訴訟特例法第二条、第五条により訴訟による救済の途が開かれていたのである。しかるに原告は、自ら法の認めるこの救済方法をとらず六ケ月の出訴期間を徒過した次第であるから、この出訴期間の経過とともに本件事業認定は確定し、もはや争いえなくなつたものである。しかも、本件収用につき認定されるべき事業が何であるかは、上級庁である建設大臣が認定したところの起業者の事業認定申請書添付の事業計画書及び図面により判定すべく、下級庁である収用委員会としてはこれに基いて裁決すべきであり、これを変更するなんらの権限もなく、またこれを変更することは許されないものと解すべきであるから(昭和七年十二月二十日行政裁判所判決参照)審理不尽の違法があるとの原告の主張は、これまた失当である。

3、さらに一歩を譲り、仮りに建設大臣の事業認定を変更する余地があるとしても、収用地上に将来建設されるべき未着手未完成の建物の一部に替地を捻出し、且つ当事者の合意を条件として賃貸を命ずるような不確定の裁決をすることは不可能であるから、かかる原告の替地要求を認容しなかつた本件裁決にはなんら違法の点はない。

「参加人側の主張。」

(原告主張の請求原因に対する答弁)

一、請求原因中第一の事実はこれを認める。

二、請求原因中第二の一乃至三については、被告の答弁事実を援用する。

三、請求原因中第二の四、(替地補償をしない違法)について。

1、この主張は本訴においては許されない。すなわち、替地補償は要するに損失補償であるから(法第七十条、第八十二条参照)訴願することはできず(法第百二十九条第二項但書)直接裁判所に出訴すべく、しかも土地所有者たる原告は起業者を被告としなければならない(法第百三十三条)のであるから、被告委員会を被告とする本訴は不適法であり却下されるべきものである。

2、仮りにしからずとするも、替地補償の要否は被告委員会の自田裁量処分に委ねられているものである。すなわち、このことは、法文上収用委員会は、「裁決しなければならない」ではなく「裁決することができる」と明記されていること。又、法文上「必要と認めるとき」とか「相当と認めるとき」とか規定された場合に限り自由裁量処分が認められているものと解すべきでなく、行政処分をするについて一定の準則を定めてその範囲内で自由裁量処分を認める規定も存すること(河川法第二十条、鉱業法第三十二条等参照)等から明らかである。

3、仮りにしからずとするも、原告の替地補償の要求は法第八十二条所定の条件を充していない。すなわちち、京都相互タクシー株式会社に賃貸中の土地は賃借人が任意に借地を返還しない実情であるから、訴訟で返還を求める他なく、とすれば、賃借人は借地法の保護を受け、且つ正当事由を容認されない実例が多いため、土地明渡は不可能に近いものと考えられ、仮りに勝訴するとしても少くとも訴訟に五年以上を要することはこれまた実験則上明かなところであるから、右替地補償の要求は相当でない。なお、替地補償は、土地所有者が土地を指定して要求した場合において始めて裁決をうるものであるから、原告の指定した土地以外において替地を提供すべきかどうかを審議する要はない。

四、請求原因第二の五、(違法な事業認定に基く裁決の違法)について。

1、この主張も要するに前記の替地補償に関する主張であるから、本訴において主張することは許されない。

2、仮りにしからずとするも、事業認定の瑕疵を以て本件裁決取消の理由とはなしえない。すなわち、原告は利害関係人として行政事件訴訟特例法第五条により、事業認定の違法を訴訟で争いえたにもかかわらず、出訴せず期間を徒過したのであるから、本件事業認定は右期間の満了と同時に形式上もまた内容上も確定したものというべく、もはや原告が本訴においてこれが当否を争うことはできない。事業認定は特定の事業が土地を収用しうる事業であることを確認するに止まらず、この結果本来国家の有する土地収用権を起業者に授与するものであり、且つこれにより土地細目公告等の爾後の手続が開始しうる個々独立の行政行為であるから、右事業認定に当然無効の瑕疵があるか、もしくは事業認定の失効(法第二十九条)の場合の外、その当否は争いえないものである。又、農地買収手続は、下級庁たる農地委員会及び上級庁たる知事という一貫した機関によつて行われるものであるに反し、土地収用手続は、独立、別個の機関が夫々独自の見解と権限に基いて行使する独立の行政処分であるから、両者を彼此同一に論ずることをえないものであつて、原告の例示する最高裁昭和二十九年五月十五日判決は本件に適切でない。なお、本件事業認定は新法施行直前で救済方法が明確且つ十分でなかつたというが、かかる立法の不備をとらえて法の解釈を左右することは許されない。以上の如く事業認定の瑕疵は本訴において争いえないものである。

「当事者双方の証拠の提出及び認否。」〈省略〉

理由

第一、本案前の抗弁について。

原告主張の違法事由のうち一乃至三が、被告らの主張する法第百三十三条にいわゆる「損失の補償に関する訴」に該当しないことは原告の主張自体から明白であり、しかも当裁判所はこの点において本訴を認容すること後記のとおりであるから、爾余の点につき論ずるまでもなく本抗弁は採用する限りでない。

第二、本案請求について。

原告主張の請求原因中、第一の事実、すなわち、起業者たる参加人の土地収用裁決申請に対し、被告委員会が昭和二十九年十月九日原告主張の如き本件裁決をしたことは当事者間に争いがない。

そこで先ず原告主張の違法事由のうち二について判断するに、被告委員会の委員中村一策が昭和二十九年六月十四日に委員を辞任したこと、その当時被告委員会の予備委員として雉本俊平、同杉村敏正の両名が在任していたことは当事者間に争いがないところ、成立に争いのない乙第十三号証に証人雉本俊平、同岩本正明(第二回)、同清水薫の各証言を綜合すると、

一、被告委員会が現行の新土地収用法の施行により昭和二十六年十二月一日に発足すると同時に、被告委員会の委員として川北正太郎、筒井浩二、村山喜一郎、長浜政寿、岩井盛次、神内徳治及び島恭彦の七名、予備委員として跡部力、杉村敏正の二名が夫々京都府知事から京都府議会の同意をえて任命されたこと。

二、右予備委員に対する法第五十二条第二項所定の就任の順位については、任命権者である京都府知事としては特段の定めをしなかつたが、被告委員会の事務局である京都府土木部監理課が、委員の任期決定の方法に準じ、抽選により跡部力を先順位者、杉村敏正を後順位者と定めたこと。(前掲岩本の証言中、右認定に反し恰も被告委員会がこれを定めたと供述する部分は、当時被告委員会が発足前であつた事実並びに右証言の経過に照らし採用することはできない。)

三、右筒井委員が昭和二十七年十月任期満了以外の事由で辞任したので、本来ならば先順位者と定められた跡部予備委員が当然その残任期間と認められる同年十一月三十日まで委員に就任し、その反面予備委員の資格は同時に喪失したものと解すべきところ、同人は引続き予備委員として留任し、同年十二月一日新たに中村一策が筒井委員の後任に任命されたこと。また右川北委員が更新任期満了前の昭和二十八年八月死亡したので、本来ならば前記の如く跡部予備委員の委員昇格に伴い当時唯一の予備委員であるべき杉村敏正が当然その残任期間と認められる昭和三十年十一月三十日まで委員に就任すべきところ、同人は引続き予備委員として留任し、昭和二十八年十月一日(当時本来ならば杉村予備委員が委員として在任している期間中である)新たに岡田啓治郎がその後任に任命されたこと。

四、右跡部予備委員が同年九月辞任したので、雉本俊平が同年十月一日その後任に任命されたこと。そしてこの際も、任命権者たる京都府知事は、所定の就任の順任については特段の定めをしなかつたし、また前記監理課は、「雉本俊平は先順位者たる跡部力の後任に任命されるものであるから、特段の定めなくして当然予備委員のうちの先順位者に就任するものである。」と解し、杉村、雉本両予備委員の就任の順位については、抽選その他なんらの処置もとらなかつたこと。

の各事実が認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

以上認定の事実に照らすと、跡部、杉村両予備委員に対しては、法第五十二条第二項所定の就任の順位が一応明示的に定められていたものと解せられるけれども、雉本俊平はかかる明示の定めなくして予備委員に任命されたものと解せざるをえず、また他に同人の就任の順位につき特段の定めがあつたものと認めるに足る証拠もない。

そこで、次にかかる場合において、雉本、杉村両予備委員の就任の順位をいかに解すべきかについて案ずるに、前記認定の如く、当時の監理課は「先順位者の後任たる雉本俊平が当然予備委員のうち先順位者に就任する。」と解していたものと認められるけれども、もし右見解を是認するならば、被告委員会の本委員が同時に二名以上欠員を生ずる異例の場合は別として、一名宛順次欠員を生ずる通常の場合において、予備委員のうち後順位者が委員に就任する余地は全くないし、また、もし先順位者たる予備委員の欠員補充前に本案委員に欠員を生じた場合においては、先順位者たる予備委員の後任を任命しなければ、本委員の補充ができないものと解する他はなく、かくては現行土地収用法が予備委員制度を新設した立法の趣旨は全く没却されるものといわざるをえない。蓋し、予備委員制度が設けられた所以のものは、収用委員会の委員の任命に慎重な手続を必要とするため、任期満了以外の事由により委員に欠員を生じた場合、その欠員を速かに補充することが難しく、そのため敏速を要すべき収用委員会の審理並びに裁決に支障をきたす虞れが予想されるため、かかる場合なんらの任命手続を要せずして当然予備委員のうち先順位者が委員に就任してその欠員を補充すべく定められたものと解せられるからである。そしてまた、前掲証人岩本正明は「委員には、経済に明るい人、法律に明るい人、一般に明るい人と各分野から選ぶので、中村委員の辞任により杉村予備委員が委員に昇格すると殆んど学者許りになつてしまうので、雉本予備委員に先順位者の就任を依頼したと思う。」旨証言するが、準司法的機関たる収用委員会の委員並びに予備委員は職域代表ではなく、各委員個々人が夫々公正な判断力を有することが必要であり、しかもどの委員に将来欠員を生ずるかは予じめ推測されるべき事柄ではないから、予備委員の就任順位の決定につき右のような観点を考慮にいれることは全く無意味であり、また委員に欠員が生じた後適宜その就任の順位を定めるということであるならば、予備委員制度の本旨にもとる本末をてん倒した議論というべく到底賛同できない。

しからば、本件において、跡部予備委員の辞任により当然杉村予備委員が先順位者に昇格し、雉本俊平は予備委員のうちの後順位者として就任したものと解すべく、とすれば、中村委員の辞任当時杉村、雉本両名が予備委員として在任していたことは当事者間に争いない事実であるから、予備委員のうち先順位者たる杉村敏正が、中村委員の辞任により当然委員に就任したものと解するのが相当である。(なお原告は委員に、欠員を生じた場合においても、その旨の通知がなければ先順位者たる予備委員も委員に就任しないと主張するが、前記予備制度の本質からみて右主張は採用できない。)

しかしながら、中村委員の辞任後開かれた本件土地収用に関する審理並びに裁決に際し、被告委員会の会長村山喜一郎が右杉村敏正に対しその招集の通知をしていないことは弁論の全趣旨からみて当事者間に争いのない事実にして、しかも成立に争いのない乙第一乃至第六号証によれば、右は本件に関する六回の被告委員会のうち昭和二十九年十月九日に行われた最終の被告委員会にのみ該当するものではあるが、被告委員会は当日に至り漸く本件を金銭補償にする旨の最終的態度を決定し、以て本件裁決をなした事実が認められるから、(右認定を左右するに足る証拠はない)本件裁決は、正しく合議体の構成員のうち少くとも一名に対し適法な招集の続をなさずして、議決したものといわねばならない。

しかして、合議体が合議体として有効に活動しうるためには、その構成員全員に対し合議体に参加しうべき機会が与えられていることが要件と解せられるから、(蓋し、合議体においては、合議の性質上一人の意見によりその結論が左右される可能性を有するからである。そして本件裁決についても、前掲乙第一乃至第六各号証により認められる本件審理の経過に、成立に争いのない甲第十、第十一各号証または鑑定証人佐藤鑑の証言などから認められる本件裁決に対する多数の反対意見等を彼此勘案すると、その可能性がないとは認められない。)この要件を欠くときには、右合議体の議決は無効にあらずとも、到底その取消を免れないものと断ぜざるをえない。(この点につき田中二郎著行政行為論三十七頁以下、なお民事訴訟法第四百二十条第一項第一号、第三百九十五条第一項第一号、第三百八十七条参照)

しからば、爾余の争点につき判断をなすまでもなく本件裁決は違法にして、しかも取消を免れない。

尤も、証拠上は、前記認定のように中村委員の辞任当時杉村敏正には予備委員の資格なく(本委員の資格の有無は争点外である)雉本俊平のみが被告委員会の適法な予備委員として在任していたものと解すべき余地があるから、(この点は間接事実であるから当事者の主張には拘束されないと解すべきであろう)本来は雉本俊平が中村委員の辞任により委員に就任したものと解すべき疑いが十分持たれるが、仮りにそうであるとしても、前記認定のように、「被告委員会の事務局たる前記監理課は、従来被告委員会の委員に欠員を生じた場合においても予備委員のうちの先順位者が当然その後任に就任するものとして取扱つていない事実」に、前掲乙第十三号証並びに証人雉本俊平の証言を綜合すると、雉本予備委員に対しても(特に同人の適法な通知先と認めるべき委員名簿記載の住所に対し)杉村敏正に対すると同様前記の招集の通知が適法になされてはおらないものと認めざるをえない。(右認定に反する前掲証人岩本正明の証言部分は採用せず、また乙第十四号証を以てしても右認定を左右するに足らない)

しからば、雉本俊平が中村委員の後任に就任したものとしても、前同様の理由により本件裁決は取消を免れない。

よつて、原告の請求は相当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条第九十四条後段を各適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 山中仙蔵 鈴木辰行 栗原平八郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例